ゴルフレポート

twitterタイガーがマスターズで埋めた11年間の空白とタイガーが歩む次のステップ
【マスターズ】

 しかし昨年、ツアー選手権で優勝し、ツアー通算80勝目を達成した彼は、一気に自信を取り戻す。今年に入ってショットの打ち分けも以前のように少しづつできるようになった。パッティングに関しては、以前のようなツアーでも1.2位を誇る数値からは程遠いが、最近練習ラウンドをよく一緒にするジャスティン・トーマスのショートゲームコーチであるマット・キレンの指導のおかげで、今回も長いパットや繊細なパットが良く決まっていたと思う。

 「最もつらいのは、以前のように練習ができないということだ。背中が痛くなるから、長時間練習することはできないし、全ての練習をひとつひとつすることはできない。その中のいくつかをピックアップして練習しないといけないんだ」

 43歳になり、加齢による体の変化や衰えについて言及することが多くなっているタイガーだが、シャフトを軽量化したり、以前は使ったことのなかった「カチャカチャドライバー」などをトライするようになり、クラブを滅多に変えない彼が、最近では最先端のテクノロジーも取り入れる柔軟性も生まれた。

 また柔軟性という意味では、人間関係においても、ジャスティン・トーマスやブライソン・デシャンボーといった若手とも友人のように付き合うようになった。以前は、マーク・オメーラやフレッド・カプルス、デービス・ラブⅢら年配の選手たちにかわいがられていたタイガーの印象がガラッと変わってきたことは確かだ。

タイガー・ウッズ

マスターズ 最終日
2019年4月14日ジョージア州オーガスタのオーガスタ・ナショナルGCで開催されたマスターズで、タイガー・ウッズ(米国)が優勝を決めた後表彰式でトロフィーを掲げて喜びを表す。(Photo by Andrew Redington/Getty Images)

 そして最近では、以前よりもきちんとファンたちにサインをするようになり、私も現場で会うと、笑顔で挨拶してくれる。こないだは、自ら手を差し出し、ガッツリと握手をしてくれた。
 タイガーは、よほど普段から親しく付き合っている米国人記者を除いては、基本的にはメディアのことは「無視」である。目の前を通っても素通りで、目も合わせない。だがスキャンダル後、長年スポンサーだった企業が次々に契約解除し、ツアープロで彼を慕っていた弟分たちもまた、タイガーの家族への裏切りに疑問を感じて彼の元を離れていく選手が多くなると、人恋しいのか私のように時々アメリカにやってくるメディアが普通に挨拶するだけでも、ハグして応えてくれていた。それだけその当時はタイガーも寂しかったのだろうと思う。
 つい最近では、マスターズの大会前日に行われた「ISPSハンダ・全米記者協会授賞式」で彼とは接触があったが、試合直前とはいえピリピリした様子もなく、笑顔で接してくれた。以前の、人を寄せ付けない怖いタイガーとは違ってきたのである。これも、サムとチャーリーという二人の子供の父親となり、空白の11年間で人生の荒波に揉まれ、いろいろなことを経験したことが大きいと思う。いろいろな人間に出会い、中傷して去っていく人もいれば、苦しい中で助けてくれた人たちも大勢いる。タイガー自身がそんな経験の中で、人間的に成長した証と言えよう。

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